今回は、IT業界の法人営業の仕事がどんな感じか、説明させていただこうと思います。
<<ご説明の前提条件>>
IT業界の法人営業といっても、その種類と幅は広いですので、概ね社員100名程度以上で、組織が存在する会社をターゲットとした場合、商品・サービスを販売する場合の仕事内容に関してご説明させていただきます。
既存顧客からの追加の相談は、比較的簡単に受注に至ることから、新規の取引先への営業活動に関して記載させていただきます。
また、営業担当者が実際に行う活動は多分に個人差があります。今回は節税サラリーマンの行動をご案内させていただきます。
■事前の活動
●マーケティング活動
企業に何かを売る場合、従来のように飛び込み営業を行うことは非常に効率が悪いです。
アポイント無しに訪問し、受付からコンタクトを取ろうとしても、内線電話や、ipadが置かれているだけの受付が増えています。内線電話をかけても、あっさり断られてしまうことがほとんどだと思います。テレビドラマ「踊る大走査線」のように、受付嬢を上手く使うことも難しいです。
営業活動効率化のためにも、あらかじめアポイントを取得せねばなりませんが、縁もゆかりも無い企業の担当者をみつけ、アポイントを取ることは非常に難しいです。
ですので、法人営業を行う企業の大部分は、あらかじめ個人情報を取得し、データベース化しています。
主に、展示会、セミナー等でのアンケート、営業担当者が受け取った名刺情報、問い合わせフォームへ入力した内容を抽出して作成いたします。
以前は名簿を買うようなこともありましたが、個人情報保護法施行以降、そのような個人情報の入手はコンプライアンス上、難しくなりました、
そのデータベースに対して、メールマガジンの発行、展示会・セミナーの案内を行います。誰が、どのような記事に反応し、どのページをどのくらい見ているかを集計するITツールがあります。関心度が高そうな方に関しては個別ご連絡を取ります。
平行して、売りたい商材に関しては、データベースから売れそうな見込み先を抽出、内勤営業が電話をかけて、検討の可能性を確認します。
その際に、確認するポイントが”BANTC”になります。
●BANTCとは
以前は、BANT(バント)と呼んでいましたが、最近そちらにCが付きまして、BANTC(バントシー)と呼ぶことが多いです。
並べて書くと、下記の頭文字を取った略語になります。
・予算(Budget)
・権限(Authority)
・必要性(Needs)
・時期(Timeframe)
・競合(Competitor)
この情報を収集し、営業対応させるべきとなりますと、
法人営業担当に割り振りがされます。
■営業活動
●アポイントの取得
営業担当へは、見込み客からヒアリングした情報、当社の案内にどのようなコンタクトをしているかの情報が共有され、その内容を確認し、アポイントを取ります。
内勤営業が確認している内容次第ですが、確実にアポイントが取れそうならメールでスケジュールを含め打診します。アポイントを取ることが少し難しそうと感じたならば、電話にてコンタクトを取ります。
●初回訪問
まず、お互い初対面ですから、場を和ませるような話を2~3分行います。天気の話や、訪問先が駅から近いとか、遠いとか、正直意味の無い話になります。
次に、自分たちの会社の紹介、本社がどこで、どのような事業でお金を稼いでいるなどを軽く披露します。
ここからが本格的な商談になります。節税サラリーマンの場合、内勤営業から回ってきた情報とお会いした方の考えに乖離が無いかを確認します。
具体的には、下記のような聞き方をします。「来年の4月から100台のPCで***ソフトウェアを利用されたいと内勤営業から聞いているのですが、正しい情報ですか?」
そして、興味のある商品・サービス等に関して一通り説明し、不明点には追加説明、質問には出来る範囲で回答し、
その場で答えられない事項(※)は、持ち帰って後日回答すると約束します。
※の補足
わからないことを適当に答えることは、誤った情報を伝える可能性がありますし、その場で調べるような事は失礼に当たりますので、ご注意ください。
後ほど出てきますが、初回訪問最大の目的であるBANTC確認を最後に行いますので時間の管理も大事です。
60分の時間であれば商品説明、質疑応答まで40分ほどで終わらせて、BANTC確認に十分な時間を確保します。
一通り話が終わった後、初回訪問の最大の目的である、BANTCの確認を行います。次の項目で項目ごと聞き方のポイントをご説明します。
これが重要ですが、軽い口調で「おまけで確認していますよ。」という雰囲気を醸し出します。
面談者と十分なコミュニケーションが取れていない段階でBANTCの確認を行うと、「根掘り葉掘り聞いてくる。自分に権限が無いのを確認しているのか?」といったマイナスの感情を持たれてしまうことが多いので、節税サラリーマンは最後に聞くようにしています。
○予算
ポイントは「予算が確保されているか?」です。
予算が確保されていれば、この後確認するスケジュールも概ね予定通りに流れますが、予算が無いとなると、当初確認したスケジュールで進むことはほぼ無いです。
予算が無いのであれば、どのような方法(稟議書等)で予算を取ることができるのか?承認をとる場合の起案者と決裁者は誰で、どのようなプロセスで、決裁までに必要な期間を確認します。
最も注意しなくてはならないのが、採用商品を決めた後に、相見積を取るか?の確認です。競合の項目で詳細記載いたしますが、相見積もりを取る企業に関しては、SE(システムエンジニア)の同行商談、技術的な情報提供は最小限に抑えます。
○権限
この提案(競合を含めて)、「誰が、決めるのか?」を確認しますが、担当者の信頼度もここで計ることが出来ます。
・信頼できそうな担当者の場合
「現場で候補を用意して、最終的には部長決裁。」と回答を得られる場合が多いです。
この場合、後ほど確認する競合情報と含め、やるべきことを粛々と進めて行くことになります。特に競合との差別化ポイントを含め、提案内容を理解できる資料を用意する事が重要です。
担当者から決裁者である部長への説明には、こちらが用意した資料をそのまま使うことも多く、細かすぎる文字(老眼対策)と、黄色と赤を多用(目がチカチカする)した資料は厳禁です。
またやるべきことの中には、部長を懐柔することも含めています。
・信頼できそうにない担当者の場合
「上はITなんてわかって無いから、私が決めて承認をもらうだけ。」と回答してくることが多いです。仮に事実がそのとおりであったとしても、このように虚勢を張るタイプは、急にへそを曲げたり、無理な要求をしてきたりということもあります。
経験的にですが、特に目的もなく個人の興味レベルで商談し、時間をつぶしている(残業代稼ぎ)のではと感じることも多いです。
こういった担当者の場合、最終的に失注することが多いです。そもそも会社として検討していたかも不確かです。
また、その理由も稟議承認されなかったと、ざっくり伝えてくることが多いです
○必要性
・必要性が高い場合
必ず買わなければならないものであれば、後ほど出てくる競合と比較の上、どこかには必ず発注すると思います。この場合、受注できるか、出来ないかは主に商品力(ブランド)が問われます。商品が良くて、安ければ何もしなくても受注に至るでしょう。
しかしながら、競合も似たり寄ったりの商品を提案している場合、受注出来るかどうかは、個人の営業手腕に依存します。自社の商品をわかりやすく、しかも競合より良く(競合を悪く)見せ、それでも良い印象を持たれるには人当たり(人柄)が重要ですし、決裁権限を持っている責任者と良い関係を作ることも必要です。
・必要性が低い場合
こちらから受注するためには、高い営業手腕が必須です。
その商品の必要性を理解してもらうところからになりますので、商談も長くなりますし、実際に検討に至るかわからないため、無駄骨になる可能性が高いです。
しかしながら、必要性の低い見込み客に必要性を理解してもらった場合、自分たちが提案した商品をベースに競合比較を行いますので、非常に有利な商談となります。
こういった活動は、開発メーカのハイタッチと呼ばれる営業担当が主に対応します。
○時期
時期を知る重要なポイントは、直近に導入する見込み客だけを抽出するわけではなく、それぞれの見込み客の導入時期をあらかじめ知ることによって、いつから営業開始すればよいかの情報を集めることになります
・直近に導入予定がある場合
こちらはシンプルですね。マメなフォローで、受注につなげます。
・1年以上先の導入予定の場合
1年以上先となれば、当面はメール&電話でつないでおけばよいでしょう。そろそろ提案時期となりましたら、提案を開始いたします。
〇競合
ある商品・サービスを見込み客に売ろうとした場合に、必ず競合は現れます。ただ、同じ商品を提案する競合が現れることは比較的少ないです。
それぞれの商品・サービスには強み弱みがあります。一般的な営業担当のイメージですと、可能な限り強みを見せて、弱みを隠すことだと思います。
節税サラリーマンの場合、弱みの部分をしっかり伝えることを心掛けています。弱みを伝えることで顧客の信頼を得られることもありますが、購入いただいた後のトラブル回避にも役立ちます。
「聞いていた話と違う」とご立腹されるのはよくあるケースですので、説明の際には書面を利用することも大事なポイントと思います。
・違う商品を提案している場合
ある課題を解決したいというニーズが高い、ある商品が売れているという情報は、IT業界内をものすごいスピードで駆け回り、似たような商品、サービスは続々リリースされます。
見込み客の側でも何かしらの導入を検討する場合、複数の商品、サービスを検討し、その中で最も適切なものを選びたがります。IT業界の営業活動では、他社比較資料を非常に多く求められます。
シンプルに比較し、提示できれば良いのですが、機能の有り無しを○×で表した上に、性能の良し悪し、
詳細な機能の有り無しと、比較するポイントを特定することが難しい上、各社自社に都合の良い比較資料を作成しがちです。
また、そういった場合の比較資料は、第3者機関に依頼して調査、作成するのですが、第3者機関側もビジネスとして調査する訳で、お金を払った会社に都合の良い比較結果を提示します。
こういった事はIT業界内部では、周知の事実ですが、見込み客側は知る由も無い話です。
・同じ商品を提案している場合
見込み客側も同じ商品の提案を2社以上から受けることは無駄な時間を使うことになりますし、同じ商品の説明で内容に差異があった場合、どちらが正しいか調査する必要性が生じてしまい、更に無駄な時間を使います。
最終的に採用する商品を確定した段階で、見積依頼を複数社に出すことがあります。これを相見積もりといいますが、見込み客の会社全体の方針として決まっていて、初期のヒアリング段階で聞いていれば仕方のないことです。
しかしながら、「調達部門が勝手にやった」という言い訳で、相見積もりを取られると営業担当としてはものすごく嫌な気分になります。
なぜなら、営業活動でそれなりの時間と労力を使い、SE(システムエンジニア)を無償で働かせて、受注活動を行っており、活動分のコストを前払いしている状態です。受注に際してはそれなりの利益をいただきたいと思います。
競合は、そのような前払いコスト負担がないこともあり、目いっぱいの価格を提示してきますので、仮に受注できたとしても、薄利になってしまいます。このような見込み客は営業担当のコストは無償だと思っているのでしょう。
●その後の営業活動
初回訪問で確認できたBANTC情報を基に提案を進めていきます。
概ね以下のステップを踏みます。
・概要説明と内容理解
・概算見積の提示
・商品・サービス構成のすり合わせ
・提案内容の合意
・見積提示
・受注内示
・受注
ステップ間の進め方は状況によって様々ですが、ポイントだけお伝えしたいと思います。ただ、これは節税サラリーマンの進め方です。こちらだけが正しい訳ではなく、正解は多数あるとご理解ください。
・誠意ある活動を心掛ける。
・説明内容は、なるべく書面で提示し、誤解を生まないようにする。
・基本的には素早いレスポンス、時にはわざと遅らせることも。
■まとめ
いかがだったでしょうか?
IT業界の法人営業は、非常にやりがいのある仕事ですし、個人裁量の範囲も広いです。その分、会社への報告に細かさが求められることは少し面倒ですが、営業活動を支援するITツールを利用することで、報告の手間も少々削減できています。
節税サラリーマンを含みベテランの営業担当は、商談相手が誠意を欠く人物である場合、あっという間に見抜き、対応が冷淡になります。
わかりやすい例でいうと、「会社から値引きの許可を得ていても適用しない」といったところでしょうか?
誠意を欠く人物とはあまり会いたくないですから、会う理由として高い利益貢献を求める訳です。
現在の勤務先へ転職した経緯は下記にまとめてます。