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グローバル企業の共通言語は英語ではない!複式簿記の歴史

こんにちは、節税サラリーマンです。

以前の記事で、簿記の歴史が面白いとだけ書き、その面白さの内容は気が向いたら書くとしておりました。

今回、簿記の歴史を紹介しようと思ったところ、グローバル企業でのダイバーシティ、共通言語との関連性が非常に強いと感じましたので、その関連性含めご紹介させていただきます。

タイトルにも書きましたが、グルーバル企業の共通言語は英語ではありません。

※表記揺らぎに関して
本記事では、「簿記」は「複式簿記」を指しており、複式簿記であることを強調したい場合、「複式簿記」と記載いたします。

日本では、単に「簿記」と表記、または発言された場合、「複式簿記」を指す場合がほとんどです。本記事でも慣例に沿って「簿記」は「複式簿記」を指しておりますが、他に単式簿記も存在するため、その点ご認識お願いいたします。

■グルーバル企業でのダイバーシティ、共通言語とは?

節税サラリーマンの営業担当先には従業員が数万人、世界中にグループ企業が存在する会社が複数あります。それだけの規模になりますと、各社からの売り込みも激しく、価格要求は熾烈です。また、調達の責任者である部長さんも例外なく厳しい人たちばかりです。

取引が長くなるにつれ、良い関係を築けている部長さんがおり、時々面白い話を伺うことが出来ます。先日伺った、同社におけるダイバーシティと共通言語のお話が、目から鱗でしたので、ご紹介させていただければと思います。

●ダイバーシティ

ダイバーシティはなぜ必要なのか?

皆さんの勤務先を考えて欲しいのですが、重要なポジションについている方は比較的高齢な男性が多くありませんか?

今日まで、一定以上の大学を卒業した男性が、企業や政治でリーダーシップをとってきました。一昔前まで、大学まで進学できる人は限られていましたので、リーダーシップをとる方の、育った環境や、家族構成は似ていると思います。

育った環境が似ていて、同じ勤務先で働いていれば、同じ価値観を醸成しやすく、阿吽の呼吸で互いを理解し、経営スピードを速めることができます。

日本国内のみでBtoB(企業間取引)のみ行っている企業であれば、購入してくれる企業の責任者も比較的高齢な男性が多く、その組織構成は現在でも妥当といえるでしょう。

しかしながら、子供向け商品や、女性下着を製造している企業ではどうでしょうか?

この場合、BtoBtoC(メーカ→販売店→個人消費者)は、BtoC(企業→個人消費者)が多くなると思います。

BtoBtoCの場合、販売店の顔色ばかり伺って商品開発したとしても、消費者が購入してくれないかもしれません。

また、グルーバルでビジネスを行う場合も同様です。

世界の人口が76億人といわれている中、日本人の人口は1.27億人です。1.5%程度の中で、100%を考えることの限界が来ている訳です。

ダイバーシティは多様性を認めるということであり、国際社会の中では複数の国籍を指すことが一般的です。

〇日本におけるダイバーシティ

・女性の活用

「ダイバーシティ」という言葉、最近、聞かれなくなりましたね。「ダイバーシティ」は、「女性活用」となり、首相官邸が進める「すべての女性が輝く社会づくり」となっています。「すべての女性が輝く社会づくり」に関してはリンク先ご参照ください。

私は男性ですが、誤解を恐れずにいいますと、男性も女性も、国や地方自治体が負担する教育費は等しくかかります。でも、成人してから働いてお金を稼ぐ意識に関して、女性は男性に劣ります。

これは、教育(家庭、学校)や、社会(慣例、前例)により、機会が男性よりも少なかったと言えますし、人口が増え続けたことから社会に余裕があったからかもしれません。

しかしながら、2016年より日本では人口減少社会となり、高齢者比率は異常なほど高くなっております。日本全体に余裕がなくなり、女性にもっと活躍(働く)してもらわないと、日本社会全体が立ち行かないところまで来ています。

・LGBT

レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーといった性的嗜好のことですが、彼らをその嗜好を理由として差別しないという、マイノリティーに対する人権問題をきっかけに広まってきました。

今日では、しなければならない人権の視点ではなく、LBGTに理解がある企業であることは市場で有利な評価をされる傾向があります。多くの消費者・株主・従業員に支持され、経済成長していくための経営戦略として取り入れる必要があります。

〇グルーバル企業におけるダイバーシティ

仮に取締役が100名いたら、世界の人口比率に合わせて、人員を配置していくことだそうです。

 

 

グルーバル企業の取締役は10名程度が多いこと、事業が複数に分かれていること、人事、財務などは専門性がより重要なため、人口比率通りという訳にはいきませんが、なるべくそれ近しい配置にするとのこと。日本人男性だけではなく、女性も、白人も、黒人も、アジア系も可能なかぎり取締役に配置するようです。

●共通言語

グルーバル企業の共通言語、本記事冒頭で英語ではないと書きました。

共通言語それは数字です。もう少し広い意味でいうと簿記です。

なぜなら簿記は同じルールに則って記載された数字の集計であり、同じ数字を見た場合に認識がずれることはほぼありません。

ですので、いわゆる稟議書も文章を作成するのは最低限で、あらかじめ決められたエリアに数字を埋め込むことで申請可能なようです。

ダイバーシティを推進していけば、違う価値観、言葉を使う人ばかりになります。言語の違いにより発生する言葉の誤認に関していくつか例を挙げます。

・ドイツ語が堪能な方からから電話がかかってきて、「もしもし」と電話に出るとします。「もし」はドイツ語では女性器を意味します。

・「磯野カツオ」はイタリア語で「私は男性器」になります。

・「貧乏」は英語では「尻軽女」になります。

最後に、会食などで使う言語はやはり英語だそうです。

■複式簿記の歴史

●複式簿記の始まり(13世紀~15世紀)

複式簿記の発生にはいくつかの説がありますが、地中海貿易で繁栄したイタリアの都市(ベネチア、ジェノバ、ベニスなど)の商人を経て13世紀ごろからヨーロッパに拡大していったといわれています。

商業と、銀行業の記録・計算の道具として実務のなかから誕生し、徐々に発達しながら15世紀に下記の書物が発行され、この時点で簿記を体系的に整理できていたと考えられます。

『ルカ・パチオリ(Luca Pacioli) 「スムマ」 1494年刊 』の

本文中に簿記論に関する解説があり、そのベースとなっているのは、当時行われた簿記の解説です。

●会計期間の発生(16~17世紀)

15世紀終盤から16世紀にはいると、「コロンブスのアメリカ大陸発見(1492年)」、「バスコ・ダ・ガマによる、喜望峰迂回インド航路発見(1498年)」などを契機に地中海貿易の中心であったイタリアの商業都市が衰退します。

商業の中心は北部ヨーロッパへと移って行き、簿記研究もオランダのアントワープや、アムステルダムが中心となります。

貿易船では、ひとつの航海が終わると、収支を調べて、分配して終了となります。また、都市での商取引は、大市(メッセ※)での現金決済中心でしたので、終了後に収支を調べて、分配していました。

ところが、このころから都市に店舗を構えて商取引をするようになり、永続的な商取引が行われることになります。

また、大規模な組織運営も始まりました。

イギリスが経営していた東インド会社を例にあげると、1665年に決算をした後、次の決算は1685年と20年も待たなくてはなりませんでした。

フランスでは1660年代の大恐慌の際に、財産隠しのための偽装倒産が出現したので、ルイ14世が2年ごとに決算をするように定めています。

継続的な商取引を行うにあたり、収益が上がっているのか、上がっていないのかを判断するため、一定の期間(会計期間)を定め、定期的に決算を行う必要性が生じた訳です。

※の補足
最長6週間程度開催される定期市場。現在のフリーマーケットに近いイメージ。

●産業革命(18世紀~19世紀)

18世紀になり、北ヨーロッパにおける商権がイギリスに移ります。さらに、18世紀後半になると、産業革命により、大規模企業による大量生産経営、保険業、銀行業が始まります。

これらの企業には、大きな設備投資と、それを支える膨大な資本が必要になります。資本主義経済が発展していくのと連動し、固定資産会計が重要な課題となります。

この固定資産の損益計算を、会計期間毎に行うことが、共通認識となり、近代会計学が成立、「会計士会計学」として広まっていきます。

●ヨーロッパの没落とアメリカの台頭(19世紀末~現在)

「会計士会計学」は19世紀末から20世紀初頭にアメリカに伝わります。その後の第一次世界大戦(1914年~1918年)にて、ヨーロッパ各国は没落、アメリカが台頭してきます。

第一次世界大戦でヨーロッパ各国が失った資産とアメリカが得た資産を少し紹介いたします。

〇イギリス

776万トン分の商船を失い、輸出貿易が激減しました。

戦費ねん出のため、50億ドルの外国証券を売却し、60億ドルの対外債務を負い、対外投資の約1/4を失いました。

〇フランス

国土が戦場(西部戦線)となり、復興のため数千億フランの国債を発行します。

〇アメリカ

ヨーロッパの国々に物資を売り、資金を貸し付けていたのはアメリカになります。

それまで35億ドルの債務国でしたが、第一次世界大戦が終わるころには125億ドルの債券を保有し、世界一の債権国となります。

海外資産は、270億ドルに拡大しました。

工業生産は、1929年には全世界の42.2%を占めるに至ります。

このほか、世界の約半分の金(46億ドル)を保有したことで、アメリカドルを基軸通貨とする固定相場制度が1944年にスタートします。

アメリカドルが基軸通貨になった経緯は、過去の記事で紹介しております。

iDeCo-資産運用の基礎①通貨とはなんだ

■日本における複式簿記の歴史

日本国内で最初に複式簿記を紹介した人物は、1万円の肖像画、慶應義塾の創立者でおなじみの福沢諭吉といわれています。

アメリカの商業学校で使用されていた「Bookkeeping(※)」という教科書を翻訳し、「帳合之法(ちょうあいのほう)」という書物を発行しました。

その過程で福沢諭吉は、今日につながる多くの簿記用語を創り出しています。「簿記」は帳簿記入の略語で、これを「帳合之法」では「帳合」と呼んでいます。「帳合之法」を現代風に書き換えると、「帳簿記入之法」、「簿記之法」といったところでしょうか。

※の補足
正確な名称は「Bryant & Stratton’s Common School Book-keeping」です。bookkeepingの日本語訳は簿記です。複式簿記を指す英語は「Double-entry bookkeeping system」です。

●借方と貸方

〇簿記学習の最初の壁

簿記を学習しようとした方が最初にぶつかる壁が、「借方」と「貸方」ではないでしょうか?節税サラリーマンの場合、左右のどちらが借方なのかを把握するのに少し時間がかかりました。

会社の研修の際に、講師からご指導いただいたのは、「ひらがなに着目し、最後のはらいがどちらに出るかで判断しなさい。」とのことでした。

借方の「り」の最後の一画は、右上から始まって左下にはらいます。

貸方の「し」の最後の一画は、左上から始まって右上にはらいます。

節税サラリーマンは、これ以降間違えることはありませんでした。

〇言葉の違和感

「借方」と「貸方」に、貸し借りの意味はないのですが、この文字を見るだけですと貸し借りを連想し、違和感があります。

例として、

貸付金(お金を貸している)を借方へ記載する。

借入金(お金を借りている)を貸方へ記載する。

などは混乱してしまいそうです。

〇福沢諭吉の認識

”debit”を借方、”credit”を貸方と翻訳したのも福沢諭吉です。

彼自身も、お金を貸したのに、借方側に記載すること、お金を借りたのに貸方に記載することには違和感があったようです。

しかしながら、上記の通り、英単語を和訳した結果としては妥当と思えます。デビットカードと、クレジットカードの違いを考えると理解しやすいと思います。

デビットカード:銀行に預金して、使った金額が引き落とされる。

クレジットカード:一定期間に使った金額がまとめて請求される。

複式簿記の概念そのものが日本にとって新しいものであったため、簿記理論を日本に導入するうえで、若干の違和感はありつつも、簿記論本来の意味に近い言葉を選択したのだと思います。

〇ご参考情報

簿記の歴史で記載した通り、産業革命の頃、「会計士会計学」が発展した時代は、銀行業が始まった時期でもあります。複式簿記の発展過程では、銀行業の影響もありました。

西洋式の簿記では、取引先の相手の名前を記し、その取引先当人にとって「借り」の状態か「貸し」の状態かを記録するという考え方を採っていたようです。

■まとめ

いかがだったでしょうか?

グローバル企業における共通言語と、日本における複式簿記には意外な連動性があります。

仮に、福沢諭吉が当時の日本の商人におもねった翻訳を行っていたとしたら、海外に打って(売って)でようとした時に、会計手法の違いに戸惑い、相当に苦労するが容易に予測できます。

福沢諭吉の力がなければ、日本の今日のような経済発展はなかったかもしれませんね。そういったことからも、1万円の肖像画の人物としては最適なのかもしれません。

 

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