こんにちは、節税サラリーマンです。
今回、「藤野英人著、投資家が「お金」よりも大切にしていること」を拝読いたしました。
この記事では、その感想をご案内できればと思います。
こちらの書籍の存在を知ったのは、先日参加した「つみたてNISAフェスティバル2018」の「初めての投資!おススメの一冊 ベスト10」で第4位に選ばれたことがきっかけです。
日本人のお金に関する感覚
日本人は世界一ケチ
なんとも刺激的なコメントです。この「日本人は世界一ケチ」は目次のタイトルにもなっています。
寄付をしない
「日本人が世界一ケチ」な理由として、寄付の少なさを挙げています。
アメリカ人が成人1人当たり、年間13万円寄付しているところ、日本人はたった2,500円との事。
東日本大震災が起こった2011年に集まった、成人1人当たりの年間寄付額は6、551円です。
従来に比べれば倍増といえる数字ですが、あれほどの災害でも例年の2倍しか寄付されないということも出来ます。
家計費に占める割合から算出すると、アメリカは3%、先進国では2%~3%、日本は0.08%となります。
日本人はハゲタカ
数年前のブラジル株の投資ブームにより、ブラジルの株式市場に8兆円もの日本の資金が流れました。
ところが、元本割れを目の前にして、資金を一気に引き上げ、結果として、ブラジル通貨のレアルが大暴落しました。
リオ・オリンピックの直前、ブラジル国内の不況や、治安の悪化、人手不足による施設建設の遅れなど、悪いニュースばかりが流れ、テレビ番組では揶揄するような論調で放送されていました。
その状況を作ったのが日本人投資家だと知っていたら、あのようなニュースが流れることはなかったでしょう。
そして、日本人投資家は新たな新興国へ資金を投資します。次はロシアでしょうか?
海外では投資信託に投資する場合、20年~30年といった長いスパンで投資するのが一般的です。一方、日本では投資信託の平均保有年数は2.4年に過ぎません。
ちょっとした相場の変動に我慢できず、売ってしまう傾向があります。
お金をコツコツ貯めている”だけ”
寄付はしない、社会にお金を回すための投資をしない、ではお金をどうしているかというとコツコツ貯めている”だけ”といえます。
日本人は人を信じず、お金だけを信じているのでしょう。
日本のヒーローは公務員
アメリカのヒーローは?
バットマンの主人公、ブルース・ウェインはゴッサムシティの大富豪で、慈善事業家です。アイアンマンは巨大軍需企業の御曹司で武器商人です。
チャーリーズ・エンジェルに指示を出すスピーカーの「中の人」である、チャーリーは実業家の大富豪で、3人の女性を支援しています。
アメリカにおけるヒーローを、わかりやすく説明しているのは、サンダーバードでしょう。
サンダーバードの生みの親であるジェフ・トレーシー(5人兄弟のお父さん)は、もともとアメリカ空軍の大佐でしたが、妻の死をきっかけに軍を退役し、土木建設業で巨額の富を得ます。そして世界平和のために、トレーシー島を購入して国際救助隊を結成します。
そして自分の息子たちをサンダーバードのパイロットに育て、地球上のあらゆる災害から人命を救助しようとします。
アメリカでは、お金を儲けた大富豪が、その私財をなげうって尽くすことがカッコいい(ヒーロー)のです。
日本のヒーローは?
節税サラリーマンはテレビっ子でしたので、子供の頃から時間があればテレビばかり見ていました。でも、この「投資家が「お金」よりも大切にしていること」を読むまで、日本のヒーローが公務員ばかりということに全く気づいていませんでした。
小学生の頃、「宇宙刑事ギャバン」が大好きでしたし、「あぶない刑事」も大好きでした。
「ウルトラマン」は宇宙警備隊員、ハヤタ隊員が所属する科学特捜隊は、国際科学警察機構の下部組織で、本部はパリにあり、日本は支部がある公の機関です。
このほかにも「遠山の金さん」は奉行ですし、「水戸黄門」は副将軍です。
日本のヒーローは「公務員が、悪を倒す」のです。
8割の学生が「お金儲け=悪」
商学部で学ぶ学生にアンケートをとった結果、実に8割の学生が、「お金儲け=悪、投資=ダーティー」と考えているとのこと。
日本人は「汗水たらして賃金を得る」事が好きなようです。
日本人が美徳とする「清貧の思想」
広辞苑によると、清貧とは「行いが清らかで私欲がなく、そのために貧しく暮らしていること」だそうです。
ただ、この「貧しく」は、自らが積極的に受け入れた「貧しさ」であり、心の貧しさではありません。
また、お金やモノを貪らない生き方、物質的な豊かさを捨て去った生き方を指します。
ところが、現在の日本においては、「理念に生きるためには、あえて豊かな生活を拒否する」という思想が、
「豊かになるためには、理念を捨てて汚れなければいけない」と考え方にすり替わっています。
こちらが徐々に拡大解釈され、「豊かになることは汚れる事」
⇒「お金持ちは何か悪いことをしてお金持ちになったに違いない」
⇒「お金持ち=悪」という構図となっています。
貧しいことのみが「美しく、正義」と錯覚している状況だと、「豊かになるために、嫌なことはしたくない」という、目の前の困難から逃げる口実にも使われています。
清富の思想という考え方
ここで、マトリックス図を使いご説明させていただきます。
横軸に経済的な指標を置きます。右が「豊かさ」で、左が「貧しさ」とします。縦軸には、内面的な清らかさをおき、上が「清らかさ」、「汚さ」とします。
日本人の認識だと、清貧か、汚豊のどちらかしかないと考えがちです。
しかしながら、豊かになるには必ず汚れる「汚豊」必要はなく、清く、豊かになる「清豊」という選択肢がある点、重要だと思います。
経営者の立場であれば、会社の収益を社員や、株主に還元することで、経済(社会)を活性化することも出来ます。
また、十分な納税を行うことで、公共社会に貢献することも出来ます。
更に、税金等の補助金だけでは資金が不足している団体などに寄付することで、更なる社会貢献も可能です。
ただ、残念なことにこれらの社会貢献と行うには、ある程度の収益(資金)が必要になります。
この収益をお客様の満足によって得るとしたら、更にすばらしい社会になると思います。
今日の日本人の価値観
日本人は「汗水たらして賃金を得る」事が好きであること、それは日本人が美徳とする「清貧の思想」に囚われていると述べました。
それは結果として、「汗水たらしていない人」は無価値であるという論調にすり替わってしまいます。
強者に対して
投資で儲けている人はダメだ、経営者は部下をこき使っているだけで高給を得ている、不祥事を起こした事務次官の退職金が高いなどです。
弱者に対して
事業を失敗した経営者に対しては「あこぎな商売をした報い」となり、ニートやフリーター、無職の方に対しては「ラクをしていたのだから、将来は自己責任」、生活保護はダメという意見も目立っています。
生活保護に関して言えば、テレビ番組で放送される度に、視聴者に悪い印象を植え付けていると思います。それでも放送されるのは、弱者を叩いて喜んでいる人がいるからでしょう。
まとめ
いかがだったでしょうか?
「藤野英人著、投資家が「お金」よりも大切にしていること」の冒頭部分に関してのみ、感想を書かせていただきました。
この後、経済とは何か?お金を稼げない人は経済活動に参加していないのか?ブラック企業を生み出しているのは誰?などの論点を解説しつつ、本論に入っていきます。
最終的には、自身が運営している「ひふみ投信」の売り込みメッセージなってしまったところは残念です。
節税サラリーマンのような現役世代が読むと、原理原則が学べ、自分自身の行動への戒めとなります。また、本格的に労働する前の大学生にとっては、小売りや飲食以外の接する機会のない業界や、仕事のディテールを知ることができます。
いずれの世代にとっても、読んで無駄になる書籍ではないと確信いたします。