節税サラリーマンはそれなりに投資経験があるのですが、
どんな本を読んでも、
原理原則に触れた記述がほとんどないと感じており、
今回その内容をまとめさせていただきました。
目次
■投資で語られない事実
ひとことで言うと、
「資産運用では、A商品を買うことは、B商品を売ること」です。
節税サラリーマンは、そこそこ投資に詳しいです。
でも、それは株式投資の三角持合がどうのとか、
ファンダメンタル分析がどうのとか、
ROIやPBRがどうのということを語りたいわけではなく、
原理原則に近い話です。
1)日本人がアメリカドルを買うという行為は、
日本円を売っているということです。
2)投資信託を買うということは
日本円を売るということです。
1)を中心に、噛み砕いて説明したく思っております。
■通貨(現金)とは何か?
●日本円
皆さんがお持ちの紙幣を見てみてください。
日本銀行、日本銀行券と書いてあると思います。
こちらを正確にご説明すると、
日本銀行が発行した、日本銀行券という法定通貨になります。
●今日における通貨の交換
今日では、通貨の交換は外国為替(変動相場制)でやり取りされ、
その日毎に各通貨の交換レートが決められています。
これを変動相場制といいます。
●変動相場制のメリットとデメリット
○導入目的とメリット(あるべき姿)
変動相場制の導入目的は、
その時々の国力(経済力)に応じて
通貨の交換レートを変更することです。
そしてそれは、需要と供給に左右される資本主義における
商業活動と同じ理論で動いています。
中国がかたくなに固定相場(※)にこだわる点は、
このあたりが理由かもしれませんね。
※の補足
中国の固定相場の件は後述いたします。
自国通貨の売りが増えれば、
自国通貨と他国通貨と比較した場合の価値は下がり、
他国通貨の売りが増えれば、
自国通貨と他国通貨と比較した場合の価値が上がります。
アメリカドルベースで考えると、
80円で1ドルと交換できた時代と、
120円払わなければならない時代では、
80円のほうが、より国力(経済力)があると言い切れればよいのですが、
そうなっていないのが現在の状況です。
変動相場制の本来の導入目的を簡単にまとめると、以下になります。
国力(経済力)の落ちた国の交換レートは下がり(上記に当てはめると120円)、
国力(経済力)の上がった国の交換レートは上がり(上記に当てはめると80円)ます。
○EUとユーロの登場
上記でご説明のとおり、
法定通貨は、その国の中央銀行(日本であれば日本銀行)が発行します。
ところが、ヨーロッパで EU(欧州連合)という機構が導入され、
EUに加盟するほとんどの国々(イギリスをのぞく)では
単一通貨(ユーロ)を採用して、
EUに加盟するすべての国はひとつの経済圏という考え方となりました。
そして、EUの実態はドイツ、フランスに
コントロールされているということは、
日々のニュースを見ていればわかると思います。
その理由は、もともとのEU創設に際して主体的な役割と担った上で、
フランス、ドイツに経済力(貿易力、優秀な製品を生み出せる)が
あったことから、EU圏内の国々に関税なしで輸出することが出来、
経済力は成長を続けました。
フランス、ドイツが経済的に成長することで、
わりを喰った国々も存在します。
その国には核となる産業がなく、
優秀な製品を買うばかりで、
自国製品をEU圏内の国々に販売することが出来なかったことが
理由と思います。
ニュースになった例で言うと、
ギリシャ、ポルトガル、スペインあたりでしょうか?
○通貨が安いことで発生するメリット
通貨が安いことで発生するメリットは非常に大きいです。
自国の市場へ販売するに当たり、
自国に工場を作ることと、
20%通貨が安い国に工場を作ることを考えてみます。
※計算を単純化するため、環境リスク(人員、保険等)、
関税、費用の繰り延べ償却等の情報は排除します
想定例
工場の建設費:100円
工場が生み出す製品:100円/1年当たり
製品製造に必要なコスト:50円/1年当たり
自国に工場を建設すると、投資資金の回収は2年目で終了、
3年目から黒字化ですが、
外国に工場を建設すると、
投資資金の回収と黒字化は2年目で達成となります。
単純な例ですが、通貨が安い国々に工場が出来る理由は
なんとなくご理解いただけたかと思います。
○中国の固定相場
・目的
中国の戦略ははっきりしています。
世界から投資を呼び込み、世界の工場として産業を発展させるためです。
日本からも多くの企業が中国に工場を作りましたが、
中国の通過である元(※)が安いことで、
投資コストを少なく抑えることが出来て
また、通貨が固定(アメリカドルと固定)されているので、
為替リスクの影響を受けにくいというメリットがあります。
※「元」とだけ記載すると、文章が読みにくくなるため、
次回以降、「中国通貨元」と記載いたします。
ただ、アメリカドルと中国通貨元の交換レートが
完全に固定されているわけではなく、
一定の交換比率を維持できるように、
中国の中央銀行がマーケットに介入して、
中国通貨元売り・ドル買いを行なっています。
・リスク
交換レート維持のため、売却する中国通貨元は
短期国債の発行で賄っており、
交換するたびにアメリカドルを手にするため、
中国の中央銀行は世界最大のアメリカドル外貨準備高になっています。
これにより、中国通貨元はマーケットに溢れ返っており、
通貨の価値が低くなり、
中国全体がいわゆるインフレ状態になっています。
中国の消費者物価指数は約5%(※)と、
先進国の中で最も高い数字を誇っています。
※の補足
記憶している数値を記載しておりますので、
確実な数字を知りたい方は、別途お調べください。
このことから、中国国民生活は厳しく、
格差が拡大する要因となっています。
通常の国であれば、インフレを抑制するために
長期金利を上昇させればいいのですが、
金利を上げると世界から投資も抑制してしまう状況が
生まれてしまいますし、
そのことで中国の景気に水を差してしまう恐れがあります。
仮に、中国が固定相場制から変動相場制に移行した場合には、
相当大きな変動が予想され、
そのポイントとなるのは、大量に保有しているアメリカドルです。
中国通貨元の価値が上がったことによる、
アメリカドルの為替差損の発生が相当額になると思われます。
■基軸通貨の歴史(補足情報
変動相場制にいたるきっかけは1971年のニクソン・ショックですが、
次の項目は過去から未来に向けて記載いたします。
●イギリスポンドから、アメリカドル固定相場へ
現在、アメリカドルが基軸通貨であることは
誰しも把握していると思いますが、
アメリカの建国は他の国々に比べると最近であり、
以前はイギリスのポンドが基軸通貨として存在しておりました。
20世紀に起こった2回の世界大戦でイギリスの国力が低下、
第二次世界大戦終結間際の1944年に連合国側の首脳陣が集まり、
金とアメリカドルの交換比率を金1オンスあたり35ドルと決めたことから
アメリカドルを基軸通貨とする固定相場制度がスタートします。
日本は1949年にこちらに加わり、1ドル=360円と定められ、
おなじみの1ドル360円固定相場となります。
●ニクソン・ショック
この仕組みはアメリカドルが今後も流通を続け、
価格を維持してくれることが前提の制度でしたが、
ベトナム戦争に敗北し、日本と西ドイツの経済力が向上し、
アメリカの経常収支が悪化し始めると、
ドルを金に交換する動きが強まりました。
これは世界中の人々の間にアメリカドルが
切り下がる(※)との期待が高まり、
一旦金に交換し、その後アメリカドルを買いなおせば、
損をしなくてすむと考えたわけです。
※の補足
通貨切り下げを指しています。
ここで発生懸念があったのは、1オンスあたり35ドルを、
1オンスあたり34ドル以下に交換レートを変更してしまうことです。
世界中の人々が米国にドルと金の交換を迫り、
アメリカはたちまちその要求に応じられなくなり、
米国は、ドルの金への交換を一方的に停止しました。
これが、1971年のニクソン・ショックです。
■まとめ
投資において、「A商品を買うことは、B商品を売ること」を
通貨を引き合いにご説明させていただきました。
買う方ばかりに目が行きがちですが、
買うことで何かしらの金融商品や通貨を売却するという観点は
必要と思います。
自分が売りたい金融商品は、
ほかの人も売りたいと考えるのは自然なことです。
ちょっと長くなりすぎですね、申し訳ありません。